マダニ媒介ウイルスがペットから人に感染したはなし
マダニは原虫やウイルス、リケッチア、細菌などさまざまな病原体を人や動物に媒介することがあります。マダニの唯一の栄養源は動物の血液でその吸血の際に感染します。幼ダニ・若ダニは発育・脱皮のため、成ダニは産卵のために吸血します。ダニが媒介する感染症で有名なのは、ライム病と日本紅斑熱(ツツガムシ病)が有りますが、「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」は治療薬が無いという厄介なウイルス性の病気です。
厚生労働省によりますと今年2017年6月上旬、徳島県に住む40代の男性がペットの犬の体調が悪くなった為動物病院を受診したところ、マダニが媒介するウイルスによる感染症、SFTS(重症熱性血小板減少症候群)を発症していたことが判りました。さらに飼い主の男性も6月下旬に体調不良となり、その後の検査で同じウイルスに感染していたことがわかりました。男性にはマダニにかまれた痕跡はなく、厚生労働省は男性がペットの犬からウイルスに感染したと断定しました。
厚生労働省によりますと、SFTSは4年前に国内で初めて確認され、これまでに303人が発症し、このうち59人が死亡していますが、ウイルスがペットの犬から人に感染したことが確認されたのは国内で初めてだということです。男性とペットの犬は現在では共に回復しているということです。また、7月には、猫にかまれた女性が、マダニの感染症で死亡していたことが判明しています。そのウイルスが猫にも存在していたのです。
厚生労働省は体調不良のペットとの過剰なふれあいを控え、ペットの体調が悪い場合は直ちに動物病院を受診するよう呼びかけています。もちろんマダニに直接咬まれても感染の機会があります。オーストラリアでは任意ですが、SFTSの予防接種を呼びかけています。4~7年位ごとに再接種を公に推奨しています。部屋にマダニが落ちていたり、飼い主が農作業していてマダニに咬まれたり、子供の耳にマダニが咬みついていたなどがあります。マダニに咬まれても当人や家族が気付かないこともあります。
秋は幼ダニが多く見受けられます。フィラリア予防薬と同様、ダニの予防薬を忘れずに投与してください。
豚肉から人へE型肝炎が感染
人のE型肝炎は肝炎の中では比較的臨床症状に乏しくおとなしい肝炎と言われていますが、妊婦などではたまに重症になる可能性があり、死に至る事もある怖い病気です。人では汚染された水を介して感染することが多く、特定の地域で風土病として報告されていました。最近の新聞に焼肉店で、豚の内臓肉(レバーやモツ)を食べた人達が、豚肉からE型肝炎に感染した可能性があり、その内の一人が劇症肝炎を起こし死亡した記事が載っていました。以前、野生の鹿やイノシシから、人への感染をとり上げた事がありますが、あくまでも、野生動物からの感染として報告されたものでした。
今回は 家畜として飼われていた豚から、肉を介して人に感染した事が、今までと全く違うところなのです。豚は動物の中では比較的綺麗好きな方に分類され、トイレと寝るところはしっかり分けると言った習性を持っています。それでもウイルスに汚染された糞尿が経口的に入って感染してしまいます。
豚のE型肝炎は豚の中では割合多い病気で、約半数の豚が高い抗体価を持っています、つまり感染したことがあると言われています。E型肝炎は豚では症状がほとんど無く、しかも出荷される頃(生後約半年・体重110~120kg程)にはウイルスが体に残っていることもほとんど無く、今回の様に肝臓にウイルスが残ることは稀だと言われています。また、岩手県では(特定の病原菌に汚染されていない・E型肝炎は残念ながら保証されていませんが)SPF豚の生産もされています。
E型肝炎が感染するには大量のウイルスが必要で、また調理の際に火を通せばウイルスを死滅することができることが知られています。この報告を気にして焼肉を食べないなんて言い出す必要は無さそうです。ただし、焼肉を食べるときは、豚の内臓肉の生食を避け、特にレバーは充分火を通して食べる様にしてください。