野ウサギのはなし
日本のノウサギは南に棲むキュウシュウノウサギと北に棲むその亜種のノウサギは、生き延びる術として巣穴を持ちません。産まれてくる子供は生後1時間ほどで走り回れるほど成長した状態で生まれます。生まれた時から毛が生え目も開いています。子供の体重が大人と同じになるには生後10カ月程かかりますが、耳の長さは約3ヶ月、後ろ足の長さは約5ヶ月で大人と同じになります。天敵であるキツネ・ワシ・タカなどの捕食者から逃げるのに必要な部分が早く成長するためだと考えられています。夜行性で昼間は草陰などにじっと潜んでいます。
キュウシュウノウサギは普通夏も冬も茶色い毛が生えています。夏の毛色は茶色ですが北に棲むその亜種は冬には白くなります。これは毛の中が中空になり毛の中身が無くなるためです。毛の中の空気は保温の役目をします。白い毛は周りの雪に溶け込み保護色としても役立ちます。春から秋は主に草を食べますが、草などの食べ物が少ない冬時期は、枯れ草・笹・木の芽・木の皮などを食べています。食べる木は太さが決め手で、かじりとった枝の6~7割しか食べません。木の枝も(6mm以上の)少し太い枝は皮しか食べません。自然界では硬い物を食べるために歯が擦り減らないように上手く伸びます。
飼われているウサギでは配合食のペレットと人参やキャベツなどの軟らかい野菜ばかりあげていると、歯がどんどん伸びてしまう事があります。元々の食性・習性を良く考え飼育する必要があります。それが元気で長生きさせるコツでもあります。
ウサギとドクダミ
【問い】 うさぎのピヨンちゃん(3才位)は夏になると、庭でドクダミをやたらと食べています。そのおかげでこの子はとても元気なのかしら?それはそうと、ドクダミってウサギが食べても大丈夫なのでしょうか?(主婦)
【 答え】 ウサギは普通、毒草を見分けます。食べてもいい物と、そうでないものを本能的に食べ分けます。ドクダミには薬効成分が含まれるので量はそんなにあげない方がいいでしょう。(某獣医師談)そのうえ、いわゆる一丁食いを普通は避けます。つまり、ドクダミばかり食べるということはあまりありません。また、ウサギは少しくらい毒草を食べても吸収する前に盲腸で代謝されて、無毒にしてしまうすばらしい消化力を持っています。(ウサギに関する100問100答・野村潤一郎/メディアファクトリー)<情報提供 市川さん>
ウサギは草食動物の中でも、特に弱く、タヌキやキツネなどの肉食獣や、タカ、トビ、フクロウなどの肉食の猛禽類に狙われるなど、天敵が多く、その上、これといった武器や力を持っていません。しかし、類まれな身体能力と知恵を持つています。どんな動物でもそうですが、食べ物を食べている時は無防備で敵に狙われやすいので、ウサギは草を食べる時、耳を立てて周囲の音を警戒しつつ、後肢で立ち上がって食べます。こうする事で、少しでも視点を高くすることが出来、敵の接近をいち早く察知する事が出来るのです。
野兎病(やとびょう・ツラレミア)
野兎病は、古典的な人畜共通伝染病で人を始めとする100種類以上の野生及び飼育哺乳類、鳥類、爬虫類、魚類がかかる細菌性の敗血症です。主な飼育動物の宿主は羊です。野生動物の宿主としてはウサギやネズミですが、細菌は媒介節足動物(マダニ)と哺乳動物、羊、鳥類、爬虫類、魚類の間を循環します。普通、野ウサギとの接触が原因で感染することが多く、料理、調理をするときに素手でさわったり、調理不適切なものを食べると危険率が高くなります。人から人へ直接感染することは無いし、飼いウサギに野兎病はありません。
原因菌はグラム陰性の桿菌francisella tularensisで抗原的にブルセラ菌と関連をもっています。芽胞を作らず、湿った環境下では数ヶ月も菌が生きていることがありますが、加熱や消毒剤で殺菌できます。日本では、1994年までに1372例の人の感染が報告されていましたが、それ以後ほとんど有りませんでした。発症すると、突然の高熱が続き、食欲不振、強直、咳、下痢、などカゼと似た様な症状になります。リンパ節が腫れ数日間から数日で死亡する(無処置だと15%)こともあります。
治療薬として、ストレプトマイシン、テトラサイクリン、ゲンタマイシン、ドキンサイクリンなどの抗生剤が有効で、早期治療をすれば治ります。予防法としては、生ワクチンがあります、があまり使われていません。犬や猫には感染した死体を摂取することで感染します。基本的には、野生動物の死体を素手で触らない様にして下さい。食べる、特に生食は非常に危険なのでしないでください。