2019年の干支「イノシシ」の話
イノシシは偶蹄目イノシシ科に分類され、鼻が敏感で嗅覚の優れた神経質で頭の良い動物です。大きさは100~170cm、肩高は60~90cm、体重は80~190kg、最大で300kgにもなります。イノシシを家畜化したものが豚で、生物学的には大差はありません。
イノシシは基本的に昼行性で、草食性に近い雑食なので、地下茎や果実、タケノコ、昆虫類、ミミズ、沢蟹、ヘビなど何でも食べます。また、足が短く雪が苦手で、本来雪の深い所に住むことはありません。しかし、10年ほど前から岩手県南でも目撃され始め、地球温暖化による北限拡大や中間山地の荒廃、狩猟人口の減少などでイノシシが増加し、県北にも棲んでおり、広範囲にわたり農林被害が懸念されています。
イノシシはその丈夫な鼻や口で土を簡単に掘り起こし、水田や畑の作物を食い荒らす食害、踏み付けなどの被害が主ですが、噛みつきや突進による人的被害もあります。また、野生の獣畜からE型肝炎の発生が報告されているので、生食は厳禁です。新年は亥年で、可愛いイノシシのイラストもよく見ますが、本物のイノシシには十分にご注意ください。
サルのお尻はなぜ赤い
寒くなるこれからの季節、温泉につかるサルの話題がよく出てきます。北限のサルと呼ばれるニホンザルは、人間以外の霊長類の中では最北の青森県脇野沢に生息しています。ニホンザルの外見上の特徴は、尻尾が短い事と、顔とお尻が赤いということ。そこだけ毛がなく皮膚が露出しています。
私たち日本人は当然のように、サルのお尻は赤いものだと思っていますが、世界中のサルの中で、お尻が赤いのはニホンザルだけです。ニホンザルは子どもの頃はお尻も赤くなく、肌色です。成長するにつれて赤みを増し、秋の繁殖期になるとさらに赤くなり、オスはメスをひきつけようとします。特にアルファーと呼ばれるボスザルの顔やお尻は、ほかのサルよりも赤くなります。
なぜなら、ニホンザルの目は、人間と同様に色を認識でき、赤く目立つ色をしているということは、ほかのサルに対し、「オレは元気で強いんだ」というアピールになります。赤ければ赤いほど、元気と権威のレベルが高いという意味があるわけです。
ゴンドウクジラの集団座礁
【ウェリントン21日AFP=時事】ニュージーランドのスチュアート島で2月20日、107頭のゴンドウクジラが海岸に打ち上げられているのが見つかった。 ゴンドウクジラは体長最大6メートルの小型の歯クジラで、ニュージーランド付近ではよく見られる種類。同国では多数のクジラが海岸に打ち上げられるケースがよくある。浜に打ちあがることをストランディングといいます。ストランディングの種類には、生きているイルカが打ちあがる「座礁」、生きていないイルカが打ちあがる「漂着」、本来の生活領域から迷い込んで来る「迷入」といった種類があります。
集団座礁とは、多数の生物が座礁することをマス・ストランディングといいます。集団座礁になる原因としては、リーダーが座礁すると仲間も座礁する、鯨は傷を負った仲間を置いて行くことができず、持ち上げるようにして泳ぐ、といったことが原因として考えられています。座礁の原因のほとんどは浅瀬に近づいて溺れてしまうからなのです。多くの場合はイルカの持つ磁気センサーと地磁気、海岸線との関係に複数の原因が絡んでいると見られています。他にも、溺れることを恐れて浅瀬に逃げ込むという理由も考えられています。
地形…波打ち際の泡が音波を撹乱、相殺させてしまう。地磁気…オーロラによって磁気嵐が起こるので、イルカの磁気センサーが乱れて陸地へ向かってしまう。サメ・シャチ…敵におそわれたときに浅瀬に逃げ込むため。網…刺し網漁に使っている網に絡まったため。音の妨害…潜水艦に使われているソナーの低周波がイルカやクジラの脳を壊す。イルカの病気…脳にすむ寄生虫が潜み、パニックになる。何かに対する恐怖,疾病,寄生虫による聴覚障害,地磁気の変化,海洋構造の変化,個体群の調節等,さまざまな説があるが,そのいずれも推測の域を出ていないのが現状です。クジラが海岸に乗り上げてしまう理由は科学者にもはっきりとはつかめていません。
世界最大のネズミ、カピバラ
学生時代にアメリカの農業を体験しに行った時の話ですが、アメリカの農業といえば酪農・畜産や花卉・蔬菜です。日本と違うところは、家畜を飼うだけで無く、それらを飼育するための飼料も自前で作っているところです。私が行った農場ではとうもろこしの種も栽培していて、干ばつになっても種は取れるようにダムを持ち、灌漑(かんがい)もしているところでした。種とうもろこし用の畑には、半径が50m、直径が100mもある大きなスプリンクラーがいくつかあり、畑に水を撒いていました。そのスプリンクラーの直径が太いところで15cmくらい、先に行くほど少し細くなり、先端は5cmくらいの穴になっています。
ある日、その内の一端から水が出なくなり、修理のために分解したところ、そのホースに小型のスカンク“スビーキャット”が入り込んで水が出なくなっていました。アメリカ人のワーカーは何が起こっているのか分かるため、作業をする前から逃げ出しました。私も何やら変な匂いがしてきて逃げたい気持ちでしたが、私はパイプに詰まったスカンクを取ろうとして筒を逆にして反対側から棒を入れ何とか取り出しました。再び組み立てて修理を終えましたが、体中にスカンクの臭いが染み付き、家の中に入れてもらえませんでした。とにかく着ていたものは全て焼却し、シャワーにも入りましたが、強烈な臭いはとれず、その日はガレージで寝ました。
このスカンクやスビーキャットのニオイはタヌキやキツネのニオイより強く頭が痛くなるほどです。車でドライブしていると、時々、スカンクのにおいがしてくることがありますが、交通事故にあったスカンクの死骸が2~3Km先のこともあり、その凄さがわかります。
ホンシュウジカの生息圈
日本には野生の鹿として、ホンシュウジカ(ニホンジカ)とニホンカモシカの2種類が生息しています。どちらも国の天然記念物として保護されており、頭数は増加の傾向にあります。保護の介あってか車で走っていると、道路の路肩や薮の中にニホンカモシカが時々見られるようになってきました。
一方、県南部・五葉山周辺のホンシュウジカは、07年3月末で3300~4600頭いると推定されています。元来ホンシュウジカの北限が五葉山とされ、ニホンカモシカは寒い山岳地方、ホンシュウジカは暖かい地方と棲み分けが出来ていましたが、最近の温暖化で(?)ホンシュウジカが岩手県内でも拡散し(08年6月11日岩手日報によると、)早池峰山周辺で目撃されたと報告されています。岩泉町北部・岩手町や盛岡市でもホンシュウジカが捕獲されています。
野性動物は増え過ぎると生態系のバランスが崩れ様々な問題が出てきます。ホンシュウジカの増殖に伴い、希少な高山植物や牧草の食害が懸念されています。ホンジュウジカの生息圏が北上・拡散すると、鹿の食べ物が競合し、ニホンカモシカの食糧が少なくなり、今後ニホンカモシカが衰退することも危惧されます。野性動物の保護には、自然を守り、環境を守り、生態系を守って行かなければなりません。
以前モグラや日本猿の生息圈が北上している話をしたことがありますが、平均気温の上昇が原因の一つとすると、野性動物の分布にまでこれほど急激に影響してきているのには驚きです。地球温暖化は、地球規模で考えなければならない問題と同時に、個人の普段の生活と深い関わりを持っています。岩手の豊かな自然を守るために、一人一人、何ができるのか考えなければならない時期に来ているのかも知れません。