ヤギ・ヒツジの飼育
最近、ヤギやヒツジを飼いたいと相談を受けることがよくあります。おとなしくて雑草を食べてくれ、役に立つ動物というイメージがあるからでしょうか。ヤギやヒツジは牛の仲間、偶蹄類反芻動物、牛と同様に胃袋が4つあります。ヤギやヒツジは食べたものを一番大きな最初の胃で、発行・分解して微生物を培養、反芻し、もう一度別の栄養素に作り替えています。この大きな発酵タンクのおかげで、栄養価の低い草も良質の栄養素に変えることができ、そのほかいろいろなものが餌として利用できるのです。
しかし、原料になる草などの食物のバランスがよくなければ異常発酵したり、病気になることもあります。マメ科の草や穀物ばかりを与えてはいけません。もちろん紙を食べさせてはいけません。紙は消化しにくい繊維でできており、ほとんど栄養にならず、しかも紙にはヤギに有害なものも使われているからです。
またヒツジは春に毛刈りが必要です。そのまま放置すると皮膚が蒸れて湿疹になってしまいます。安易に飼い始めず、その習性や食生を考え、自分に合っているか見極めて責任を持って飼いましょう。
牛の鼻紋
今までに動物の個体識別法をいろいろとご紹介してきました。今回は、牛の個体識別法です。牛では、西部劇によく出て来る烙印があまりにも有名です。烙印はイニシャルや数字を書いた鉄のコテを火の中で焼き、それを牛の臀部におしつけ火傷にします。火傷の跡がケロイドになり毛が生えなくなります。現在では、その残酷さからコテを液体窒素につけ、皮膚を凍傷させ烙印にしています。冷凍コテの後からは白い毛が生えてきます。現在日本では、乳牛や肉牛の耳に付ける(ピアス状の)耳標によって個体識別をしています。遠目にもよくわかります。個体識別をすることで両親や所有者がわかるようになっています。
また、日本では古くから、和牛の個体識別法として鼻紋を活用してきました。牛の鼻は大きく平べったく粘液で覆われています。その鼻の紋様は人の指紋のように一頭一頭違います。牛の鼻を拭き、スミをぬり、紙を押し付け、魚拓のように鼻紋を採取します。それによりこの牛の所有者・血統(父母)などがわかるようになっています。
特に肉用和牛は登録台帳がしっかりしていて、生後6ヵ月までに『子牛登録』をし、生後16ヵ月から32ヵ月で『基本登録』を行います。そのとき子牛登録と照合し、間違いないか判定されます。日本の肉用牛は登録(戸籍)を行い、由緒正しく、出所、育ちをはっきりさせています。和牛肉(例えば神戸牛や前沢牛など)もブランド化され、遺伝子レベルで判定される日も近いです。BSEに対して日本の肉が安全なのは、そのようなところからも裏付けられています。
豚の嗅覚とトリュフ
トリュフは世界中を見渡しても人口栽培が成功していない貴重なキノコで、フランス料理に使われる珍味食材で、高級食材として知られています。トリュフは主にカシやクヌギなど広葉樹の根に育つキノコの一種で、土の中にあるため、発見が非常に難しいといわれています。
フランスではトリュフの採取に以前から豚を使っています。豚は嗅覚がとても優れた動物で、土の中にある食物、木の根やミミズなどを嗅ぎ出し、鼻をスコップの代わりに使って掘り出すことが出来ます。トリュフは雄豚の匂いがするので、雌豚は発情するとこの匂いを嗅ぎ出し見つけることが出来るのです。
羊の話
羊は草を食べる名人です。牛は草の上の方を食べ、馬は真ん中ぐらいまで食べます。牛や馬を放牧した後、ほとんど草が無くなって、何も食べれそうもない放牧地で羊は上手く草を食べることが出来ます。それは、短くなった草でも地面の間際まで食べることが出来るからなのです。又、木の葉を枝から食いちぎるのも上手です。これらの事から、羊の祖先は、食物の乏しい所に棲んでいたことが想像できます。
羊の上唇には縦に溝が入り、左右に分かれていて、それぞれを自由に動かすことが出来ます。これが羊の特技の秘密です。羊の門歯は、下側しか生えていません。これは、牛などと同じで、上側は固い歯茎になっています。歯と歯で齧るのでは無く、歯と歯茎で齧っています。羊の歯は中央から2本づつ、1年ごとに永久歯に生え変わります。このことにより歯から年齢を知る事が出来ます。
野生羊の毛は粗毛(ヘアー)で、皮膚に近い部分にだけ柔らかい下毛(アンダーコート)が生えています。今から8000年位前頃から、より多くのウールを取る為に、羊は改良され、体全体がウールで覆われるようになりました。羊の体には眼下腺、鼠径腺、前後の指間腺の3部位、8箇所に脂肪分の分泌物を出す脂腺があります。この分泌物は個体により臭いが異なり、羊が集団生活をする上で重要な働きをしています。
羊は、品種的には現在3000種類ほどいます。大きく分けると、肉用、羊毛用、その両方用に分けられます。気候、風土や草地などにより、もっとも適した品種がそれぞれ飼われています。羊の毛刈りは、羊の生産物の中では非常に重要です。常識的には春に毛刈りをすると思われていますが、最近では、初冬に毛刈りをすることも多くなってきました。(小岩井牧場談)理由は冬の間は、舎飼いをするので、藁ゴミ、脂、臭いが強くなります。
春から秋にかけての放牧中に、余分な脂が抜けていて、冬の前、舎飼いする時に毛刈りをすると、殆ど藁ごみが付いていません。良質な製品にするのに脱脂作業やゴミ取りで手間取ることがありません。脂も少なく、黄ばみや、臭いも少ないので、生産コストも少なくて済み、良質なウールが出来るというわけです。冬前に毛刈をしても舎飼いにするので、寒くはありません。